夫の離職きっかけに
はじめに言っておくことがある。自分が世帯主で家族を養わなければならない立場ならまったく役にはたたない。もしもあなたが夫の扶養範囲内で、子育て、家事を両立させながら仕事をしようと考えているのなら働く選択肢の一つとして参考にしてほしい。
家族構成
夫 サラリーマン 50代後半そろそろ定年
私 パソコン教室運営 50代半ば
息子 会社員 就職2年目
娘 2年前結婚。首都圏で夫と共働き
2年前に住宅ローン完済、二人の子供も就職して大きな出費がやっとなくなったところ。なんとかやってこれたのはまじめに働き続けてくれた夫の功績が一番大きいのは言うまでもないが、ここに至るまで順風満帆というわけではない。大学を卒業後、大手電機メーカーに就職した夫は技術者として30年近く勤めてきた。最も会社の景気がよい時期に社内結婚した私。
結婚10年目くらいには年収1,000万円に届く勢いだった。誰もが知る通りバブルが弾けたあと少しずつ雲行きが怪しくなり、ボーナスがなくなり、住宅ローンのボーナス払い(40万円)を月払いに変更。会社の業績が悪化、50才になった夫は早期退職の対象者となった。当時、タイミングの悪い事に、娘は就職氷河期でなかなか就職が決まらず、息子は大学受験、これで夫が失業、先が見えない恐怖に震えた。
それでも、夫から「会社辞めてもいい?」の声に、「しょうがないよ。」と二つ返事で受け入れてしまったのは、それまでフリーランスとして長らく働いてきた私が収入を補う方法を青写真で描くことができたからだ。
夫の年収全盛期の半分に
夫が会社を早期退職したことをきっかけに、私はパソコン教室を立ち上げる決意をした。それまで、ウエブの制作や企業へのパソコン指導や団体講習の請負などをフリーでやってきた。深夜帰宅続きの夫は平日、子育ての応援や家事は期待できなかったため時間が自由になるフリーランスはとても都合がよかったが、常に仕事が発生するわけではない。
それまでの仕事形態にプラスアルファ、パソコン教室を開けば固定費が見込めると判断したのだ。起業するってかっこいいような響きだけど、実のところ、税務署にかみっぺら一枚、屋号決めて改行届を出せば形の上では簡単に起業できてしまうのだ。開業する場所の目途がついたころ、夫の再就職がきまった。半年を待たずして、正社員として就職できたのは幸運といえる。年収は半減してしまったけど。
お金をかけない工夫
起業すると5年で8割は消えるといわれている。かつて、一緒に仕事をしていた仲間も起業したが、ほとんどが消えていった。潤沢な資金や借入れをする算段がきちんとできていればよいが、最初からなんでもうまくいかない。私が起業する上で決めていたことは以下のとおり。
借入はしない
家計で減った分を補うことが目的であることから、借金はしないと決めていた。事業をおおきくしようと考えるなら別だが、多くは望まない。無理はしない。夫にお金のことで迷惑をかけない。
初期投資は50万円
ノートパソコン、デスクトップパソコン、プリンター、プロジェクターは新規に購入。見落としがちなのが家賃。個人の賃貸契約と違い、店舗物件の場合は初期費用の額が大きく異なる。 例えば保証金6か月分と書いてあったら、月額×6か月を支払わなければならない。
テナントの場合、空っぽな箱に自分で内装しなければいけなかったり、不動産やさんへの仲介手数料の支払い、保険料など負担が大きくのしかかる。軽く見積もっても、一般的なテナントを借りる場合は開業するまでに200万程度はかかってしまう。私は懇意にしている不動産屋さんの自社物件(自社物件は仲介手数料がいらない)、居抜き(リフォームなし)、家賃交渉して水道、電気代込みで3万円で初期費用なし。ただし、大家に無料でパソコン教えること。
いいことは他にも。お金がないアピールをして机、椅子などは大家さんから貸していただけることになった。物件は古いが、駐車場が広く生徒さんが無料で車を置ける場所も確保できるため経費は格安だ。こうして、当初の予定通り50万円で納めることができた。
細く長く
稼ぐことを第一の目的にしない。余裕がなくなる。余裕がなくなると仕事が楽しくない。自分が楽しくないと相手も楽しくない。一生懸命働いて息を切らすより、ほどほどに働いて、年を取ってからもずっと働けるようにしていこう。
1年の収支はこんな感じ
今年7年目に突中。コロナ渦にあってもなんとかやっている。年度により多少の差はあるが1年の収支は以下の通り。
年間売上 | 300万円~350万円 |
家賃 | △36万円 ※コロナの為現在半額にしてもらっている |
通信費 | △12万円 |
車両維持費 | △12万円 |
その他、雑費などあるが大きな経費を引くと、月額20万円ほど残る。週のうち3日働き、これをできれば70才まで継続できればよいと今のところ考えている。